突撃イン!ジュエリーデザイナー津田珠子さんvol.3
(Vol.2「ジュエリーメーカーでの日々」続き)
💍「宝飾品」との出会い💍
津田🍀大きかったのは、2000年の国際ゴールドジュエリーアワォードで受賞させていただけたことから、バーゼル・フェアやヴィチェンツァ・フェアなど出張に行かせていただくようになったことですね。
とても嬉しくて、ここぞとばかりいろんなものを吸収できると行ってみました。
その時「本当の宝飾品は違う!」と衝撃を受けました。 私が日本でデザインしているものとは全く違う!と打ちのめされたんです。
「宝飾品を作りたい、ハイジュエリーに関わりたい」とすごく思うようになったんです。
石井▶︎宝飾品?
ハイジュエリーという意味では、津田さんのデザインは賞もとったりされていますよね。何が違うのでしょう。
津田🍀例えばチェーンを使ったコンテストに出ると、チェーン・地金を使った、何かプロダクトアウト的な発想のイメージがあって。
でも「宝飾品」は違う。 チェーン一つにしてもフィニッシュ(仕上げ)が、きちんと手が入っていて。
私は女性が身に着けるものという意識をせずにものを作ってたんじゃないかなと気付きました。素敵なデザイン・おしゃれなデザイン・価格。それぞれの条件は満たせていても、本当に身に着けられるものかな、これ? このフィルターを一枚一枚かけなくちゃいけないんだなとすごく実感しました。
もちろん海外と日本では街並みや文化、人種も違います。ジュエリーに対する認識も多分違っていて、もう少し何かを得ていかなくては、本当の意味での宝飾品は作れないって思ったんですね。
石井▶︎今までコンテスト用にでもボリュームのあるものもデザインされてきたり。多少奇抜なものや素材を際立てたりされたと思いますが、それも身に着ける大前提で作っていましたよね?
津田🍀もちろんです。
けれども、なんだろうな…日々つけていられるジュエリーというものを作れるようになっているかなと。ここ数年でやっと、これだったら大丈夫と確認が取れるようになったのはごく最近なんです。
石井▶︎バーゼル・フェアなど海外の展示会に行かれました。歴史ある「宝飾品」に触れられ、ゴージャスなものでも繊細に作られている...ということではないようですね。
つけこなし?最終的なバランス?仕上げ?とか、全体で違う?んー津田さんのいう宝飾品の定義とご自身がデザインしてきたものとどこが違うのでしょう?
津田🍀今までは小売店さん向けでそれこそ不特定多数に向けてのデザイン。
30代向けで素材はこう、コストはいくらというマーケティングのためのジュエリー。たくさんの一般の方向けのものでした。それはそれで必要なんですけれども、私が目にした「宝飾品」は全然違うアプローチで作っている。単純にそれを作りたいと思いました。
石井▶︎具体的にイメージしたジュエリーはありますか?
津田🍀海外フェアなどでハイジュエリーのブースを覗かせてもらい、触らせてもらった時の指馴染みだったり、裏の仕上げに驚きました。作り方が、とにかく違うんだなという。
またそういうブースにお越しになっている方が身に着けているものは体の一部というか、本当にお似合いなんです。体に対するボリューム感だったり、動いたときのフィット感も違う。あと修理・メンテナンスのことも考えられて作られている。
石井▶︎以前津田さんのブログで知り見ることができた「メレリオ・ディ・メレー」。リング一つが全てパーツで作られていて、ネジや様々な仕掛けが手作りのもので組み立ててありました。それは後々分解しメンテナンスできるようになっていたことを知り驚いたことを覚えています。 日本でジュエリーをメンテナンスするという概念は少ないかもしれません。もちろんサイズ直しなどの修理や、洗浄新品仕上げはやりますが。中にはそれも受け付けられない場合もありますね。そもそもそういう仕立てになっていない。歴史が浅いせいなのかまだそこまで行っていないですね。
津田🍀「宝飾品」は何十年、100年以上使うものなので、使っていく上での破損や不具合が起きる前提で作られている。 もちろんそうじゃないものも沢山ありますが、ハイエンドのものはそうなんだと。 日本では需要はないかもしれませんが、一つのジュエリーがネックレスにもなりティアラにもなり、それを分解してブローチにもなる。 もし日本で作ったりすると、そういう機能があることがすごいでしょうというアピールになり、でも着けるとかなり重いという。
石井▶︎以前ティアラを初めて作ったというとある工房のものを頭に乗せさせてもらったらあとても重いんです。 見ると地金の太さなどティアラ展でみたアンティークのティアラよりも太い気がしました。その後とあるブランドのティアラを着ける機会があったんですが、見た目より軽い。
津田🍀確かに技術は凄いけど、着けたら重い。いろいろ使えるのは便利だけれど、お客様がそんな組み立て私にはできないわ...というものではなく。
使う人にあった大きさやバランスで、またその人が気軽に今日はネックレスにしよう、ブローチにしようとできるようになるというものが宝飾品かなと。
石井▶︎なるほど。
津田🍀そこが結構大きかったですね。1点1点お客様のために作られたジュエリーを作りたい。ハイジュエリーをデザインして作ってみたいという漠然とした願望ですね。
石井▶︎そうなると海外のジュエラーに転職するという道もあるような。
津田🍀確かにそういう道もあったかもしれないんですけど。特にこれという具体的なものはなく、どういうふうに進めばいいか考える時間もその時はありませんでしたし。自分でちょっと模索しようと思いました。
石井▶︎一旦整理して、今後のことを考える時間も必要だったんですね。
津田🍀それと、絵を描きたいというのもありました。
忙しくて全く描いていませんでしたから、趣味でやっていた絵画を再開しようと。 日本人とフランス人が運営しているパリ国際サロンというところで出品することになり、退職しました。
絵はその後も続けています。2010年までパリ国際サロンへも出品しました。
<Vol.4アトリエ開設へ続く>
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